なぜ浮気の証拠が必要なのか

不貞行為とは

「浮気」という言葉は法律用語ではありませんので、明確な定義もありません。「手を繋いだ」「二人きりで食事をした」など「浮気の境界線」は人それぞれです。もちろん、それは個人にとっては耐えがたい苦痛であることは事実なのですが、「不貞行為」は法律用語ですので、明確に定義がされています。
通常「不貞行為」は「配偶者以外の異性との性交」とされています。

離婚においてなぜ「不貞行為」の有無が重要なのか

では、いわゆる「浮気」問題において、なぜ「不貞行為」の有無が重要だと言われているのかというと、まず民法では、夫婦は協議により離婚することができると定めています。協議離婚といって日本の離婚のうち9割がこの協議離婚です。協議離婚は、夫婦の合意により成立します。
ところが双方の合意がなくても離婚出来る条件として、5つの状況が法律上明文化されているのです。

民法第770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

上記のように5つの条件が明記されております。5番目は所謂「その他」ですので、明確な条件としては4つのうちどれかの状況に当てはまれば、相手の合意が無くても離婚する事が可能になります。そして、そのうちの一つが「不貞行為」なのです。不貞行為を立証できる証拠を持っていると、裁判で「配偶者に不貞行為があったので、離婚します。離婚の原因を作ったのは配偶者なので(有責配偶者といいます)離婚と合わせて慰謝料も請求します。」という訴えを起こす事ができます。
もしも裁判をすると、離婚が認められ慰謝料の支払いが命じられる、といった過去の数多くの裁判事例(判例といいます)がありますので、かけ離れた慰謝料などの請求をしない限りは、お互いにとって裁判は時間と費用の無駄であろうと考える人が多くなり、示談で解決しようという流れになります。
実際に、不貞行為を立証出来るだけの証拠を掴んだ殆どの方が裁判をする事なく、示談にて解決しております。ここで大事なのは、裁判で不貞行為を立証出来る証拠が、裁判する事を無意味にさせるという事です。探偵が作った裁判に使える報告書は、完璧であればあるほど、裁判で使われない事が多いのです。

なぜ「不貞(浮気)」の証拠を掴んだ方が良いのか

本来、「不貞(浮気)」の証拠はパートナーが、素直に「不貞(浮気)」を認めれば必要は無いものです。
しかし、何も証拠が無く問い詰めた場合「浮気なんかしていない」と言い切られてしまうと、それを覆す材料がないだけに、単なる言い争いになる可能性が高くなります。いわゆる逆ギレをされるかもしれません。相手が浮気を認めてはじめて、「謝罪してもらって浮気をやめてもらう」「離婚を提案する」などの話し合いのステップに進むのであり、まずは認めてもらわないと、何の解決もできません。
さらに一度、問い詰めた後では、警戒心が強くなり慎重に行動するようになる可能性が高くなります。自分で状況証拠を集めることも難しくなりますし、探偵に調査依頼をするにも、調査日を絞りずらくなったり、調査の難易度が高くなってしまう事が考えられます。
 もしも、「不貞(浮気)」を推察させるような証拠(状況証拠)をつかんでいた場合でも、決定的な証拠が無い状態で問い詰めた場合、苦しい言い訳をされることがあります。それは夫婦間では完全にアウトであっても、裁判では「不貞」(配偶者以外の異性との性交)があったとは認められない可能性があります。
具体的な例を挙げると「愛している。早く一緒になりたい」等のメールやラインのやり取りがあったとしても「口説きはしたが、深い関係にはなっていない」「キャバ嬢の営業にふざけて悪ノリしただけ」などと苦しい言い訳をした場合です。場合によっては後日、アリバイ工作をするかもしれません。
決定的な不貞の証拠があれば、「認めないなら裁判をしてもいいよ」と強気に言う事が出来ます。繰り返しになりますが、実際に裁判をすれば「不貞」と認められる証拠を持っているという事は、裁判をすること自体が無駄ですから、パートナーが浮気を認めた上での話し合いを開始することが出来るわけです。