探偵調査における「認知」

当社で受けた調査の中にも「認知」という事が問題になる事が何度かあります。例えば、浮気調査の過程で愛人に子どもがいることが判明した場合、その子が愛人の以前のパートナーの子なのか、夫の子なのか分からないという場合であったりします。他にも相続の場面であったり、結婚を選択しない男女間における養育費に関わる場合であったりと様々です。
今回は言葉は広く知れ渡っているものの、意外と深くは理解されていない「認知」についてまとめていきたいと思います。

認知とは?

認知とは、婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子供を、父又は母が自分の子であると認めることです。一般的には、父が自分の子と認めることを言います。母親の場合は、自分の子であることが明らかなので、子供が産まれた時点で法的な親子関係が生じることになっています。
ただ「俺の子だ」と口で言っただけや、認識しただけでは法的な効果はありません。血縁関係はありますが、法律上は「赤の他人」となってしまい、子供の出生届や戸籍の父親欄も、空白となります。
認知届を提出することで、正式に認知されたことになり、父と子の間に法律上の親子関係が結ばれ、それに基づき権利義務関係が発生します。

認知をするとどうなるか

認知をすると、法律上の親子関係が結ばれる事になり、以下のような結果が生じます
・認知をしない場合には空欄となる子供の戸籍の父親欄に、父親の名前が載ります。
・胎児認知をすると、出生届の父親欄に父親の名前が載ります。
・父親の戸籍にも、認知したことが記録されます。

法律上の親子関係とは

法的に親子となることで、以下のような権利や義務関係が生じます。
1 扶養義務、養育費の支払い
父子の間に、お互いの扶養義務が生じます。子供が成人するまでの養育費を父親に請求することが出来ます。認知をしなくても、養育費は支払うという男性も中にはいるかもしれませんが、養育費とは監護費用のことです。認知をしていない=親子ではないということは、子を監護する義務が無いため、養育費を支払う義務はないわけです。いつ養育費を支払わなくなっても、文句は言えません。認知をすれば、法的に養育費を支払う義務が生じます。
子供の成人後は、父親が生活に苦しんでいれば、生活を扶助する義務が生じますが、親から子への義務とは違い、自分の生活を犠牲にしない程度、余裕のある範囲内の義務となります。

2 親権
父母間の協議によって、親権を父親に渡すことが可能になります。

3 相続権
父親の遺産の相続権が子供に認められます。以前までの民法では婚外子(非嫡出子)の相続分は実子(嫡出子)の1/2でしたが、法律の変更で平成25年9月5日からは実子と同じ相続分になりました。負の遺産(借金)がある場合、相続を望まない場合は、相続放棄もできます。

4 出生届、戸籍に父親の名前が乗る
これは権利義務ではではありませんが、認知をしない場合、母親等が父親のことを話さなければ、子供は自分の父親が誰なのか、自分のルーツを知りたいと思っても分かりません。いずれ話すつもりが、果たせない可能性もゼロではありませんし、母親の話の裏付けが欲しいと思うかもしれません。成人した子どもの意思や選択を尊重する上でも客観的事実は必要かもしれません。

認知はいつできるか、いつまでできるか

「退治認知」と言って、胎児のうちに行う事も出来ます。胎児認知は母親の承諾が必要となります。
出生後は父親が生存中はいつでもできます。ただし、成人後の認知は子供の承諾が必要となります。
父親の死亡した場合は死後3年まで認知請求できます。死後の認知(相続権のため)は、子供の直系卑属(子、孫)が行えます。

相続に関わる死後認知

相続の際に争いが起きやすいのは、亡くなった父親に婚外子が居ることを相続人である妻や子が知らなかったケースです。前述のように認知している子供は父親の戸籍を見るとわかるため、相続が発生した時にはその存在が明らかになります。
認知を受けないまま父親が死亡した場合は、父親の死後3年まで認知請求できます。(死後認知における3年は他の法律にはよくある「知った時から」ではないので注意が必要です。) 認知を受けていない子は「死後に認知訴訟を起こす」事となり、訴訟になればDNA鑑定(死亡した父親の親族の協力が必要)やさまざまな事実関係等を勘案して、認知されていない子との間に親子関係があるかどうか調べられるます。その結果、認知請求が認められれば、裁判所により「死後認知」という手続きがとられ、死亡した父親の意思や相続人である妻や子(認知されていない子からみると異母兄弟)の意志とは関係なく法的にも親子とされます。
「子」となった以上は財産を相続する権利が発生しますし、遺留分も認められます。遺留分とは「遺言書にどう書いてあっても確保される相続人の取り分」で、法定相続分の2分の1となります。

認知しないという約束(契約や誓約)は無効

認知請求権という権利は「身分上の権利」と分類されるもので、法律上放棄することが出来ない権利とされています。つまり、仮に「認知請求はしません」という内容の契約や誓約書、念書等を交わしていても、後々認知の請求は行うことが出来ます。仮に母親と父親が無効であることを承知の上で金銭の支払いなどを対価として、積極的に約束を守ったとしても、子の意思や権利には関係の無いことです。

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